丁度今頃は、雲海が美しい時だ。飛騨でりんごを作っていた頃、何回か、朝4時に起きて車で山へ登った。
途中、山すそから立ち上る霧の海が視界に広がった。猪臥山の頂上まで来ると、真っ赤に燃える朝焼けの空に乗鞍が黒いシルエットを描いた。
山から降りる途中、Kさんの畑を見ていると、向こうの方で、手招きをしている人がいる。三角の小さな山小屋があって、呼ばれるままに入っていくと、
「残りもんやけど、くっていきないよ」
と言って、温かいシメジ入りのうどんを出して下さった。
その時、シメジの味のうまさと、人のぬくもりを感じた。
Kさん夫婦は、戦後開拓民として、山へ入った親の代を引き継いだ。当時、20軒あった隣人は、全て町へ降りて、現在は、Kさん夫婦だけで、山の畑を守っている。
そのKさんが、畑で採れたエゴマ(飛騨では、アブラエという)の種を送ってくださった。
貴重で、高価なものなのに種にするには、多過ぎる2kgくらいもあった。
「冷凍庫へ入れときゃ、いつまででももつよ。10年経っても種を蒔きゃおえるで」と言われた。
6月、私の畑のあちらこちらに、たくさんたくさんその種を蒔いた。
はたして、暖地の瑞穂市で収穫ができるだろうか?
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